信頼から始めるSRE組織の作り方|SREの知識地図 第8章【SREの旅 Road6】

SREの旅 Road6

『SREの知識地図』の著者を招いてお送りするSREの旅 Road6

Topotal セールス/マーケティングの my-zt です。

先日、10月22日(木) に第 6 回目となる #SREの旅 Road 6「SREの組織構造」のオンラインイベントを開催しました!

今回は、『SREの知識地図』第 8 章の著者であるサイバーエージェントの柘植さんをゲストに迎え、ホストは弊社の吉川が務めました。テーマは書籍の第 8 章です。

SRE チームを作りたいけど、どこから手をつければいいのか分からない。横断チームを作ったものの、開発チームから何をしてくれているのか見えないと言われてしまう。そんなお悩みへのヒントが、10年以上 SRE 組織に関わってきた柘植さんならではの言葉でたくさん聞けた回でした。SRE 組織の形から、現場での働き方、AI 時代の展望までをギュッとまとめてお届けます〜!

当日のゲストショートトークやパネルディスカッションの様子は以下のアーカイブをご確認ください🎥

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1. 正解がないからこそ、何度も書き直した第 8 章

第 8 章は、SRE の組織パターンと実装モデルをそれぞれ3つに整理し、自分たちに合った形の選び方までをまとめた章です。組織パターンはプロダクト専任・プロダクト横断・会社横断、実装モデルは埋め込み型・集中型・ハイブリッド型。詳しくはぜひ書籍で確かめてみてください。

個人的に印象に残ったのは、執筆の裏話です。

「組織を考えるうえでの正解ってなかなかないと思っていて。他の章と比べても、何回もこの章全体を書き直しました」

3つの実装モデルは、柘植さんがご自身の経験をもとに独自に定義したもの。事業もフェーズも規模も違う組織にたくさん関わってきたからこそ書けた章なんだな、と感じました。


2. プラットフォームエンジニアリングと SRE は何が違う?

最近よく耳にするプラットフォームエンジニアリング。SRE と何が違うのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。

柘植さんの答えは、組織のサイズやフェーズで変わる、という前提つき。そのうえで、役割はこう整理されていました。

  • プラットフォームエンジニア:複数の事業で使える共通基盤を提供し、効率化やガバナンスを効かせる
  • SRE:プラットフォームとプロダクトを調和させ、サービス全体の信頼性を高める

ただし、この境界は固定ではないとのこと。今はプラットフォーム寄りに動き、次のフェーズから SRE 的な動きを始めることもあるそうです。

チームの形についても伺いました。Product SRE は、開発メンバーの中で信頼性に責任感のある人が、自然と SRE 的な役割を担い始めるのがスタート地点になりやすいとのこと。一方の Embedded SRE は、別組織の専門家が期間を区切って入る形で、ユーザーが増えたときや複数のプロダクトが動き始めたタイミングに向いているそうです。


3. 現場から組織を変えるなら、SRE の仕事と線を引かない

組織の形を変えられるのは、多くの場合マネージャー以上の立場の人です。では、現場のいちメンバーにできることはあるのでしょうか。

柘植さんによると、進めやすさを大きく左右するのは その人に対する信頼があるかどうか。時間はかかっても、現場からでも変えていけるそうです。

「最終的には SLO をやりたいとしても、何に困ってますか、から入っていく。困りごとを1個1個やっていくと感謝されて、その中で初めて自分たちの提案を聞いてもらえるようになると思うんですよね」

最初は SRE の仕事と区切らないこと。柘植さん自身も、初期は SRE という言葉をあえて使わず、相手ごとに言葉を変えて進めていたそうです。ホストの吉川も、SRE としてすごく実感があると深くうなずいていました。

この考え方はアーキテクチャにも通じます。数年前は良かった設計が、今ではイケてないと言われることもよくあるもの。

「悪いのはそのアーキテクチャではなくて、定期的に見直すとか、変えられるような余白を設計しきれていなかったことだよね、という話をします」

見直すときの判断軸は シンプルであるか。シンプルなほどAIの精度も上がるので、AI 時代こそアーキテクチャを考えるべき、というお話も印象的でした。


4. SRE 組織をゼロから作るなら、まず本当に SRE が必要かを問う

何もない組織で SRE 組織をゼロから作るなら、まず何をするか? という問いに対して、柘植さんの答えは少し意外なところから始まりました。

「まず、本当にSREがいるかって話をしますね。今この事業のフェーズにおいて、一番重要なのがSREなのか」

必要だとなったら、SRE としてどういう存在でありたいかの認識を合わせ、まずは信頼を作るところから。そして、描いた姿にどこまで近づけているかを計測していくそうです。

「最初は組織じゃなくても、困ったらこの人に声をかけよう、という存在になっていればいい。それをスケールさせて、困ったらこの組織に頼もう、まで行けば一定認知されている状態だと思うんですよね」

いきなり立派なチームを作るのではなく、まずはバイネームの存在から。前のパートの困りごとから入る話とも、繋がりますね。


5. AI 時代の SRE 組織、作るのは簡単。でも続けるかは別の話

AI の話題では、まず始めやすいのはトイルやインシデント対応など、AI をアシスタントとして使う領域とのこと。そのうえで、個人的に印象に残った話は2つありました。

事業を続けるかどうかも SRE の関心事に

AI のおかげで PoC(概念実証) や MVP(最小限の製品) はすぐ作れるようになりました。でも、ちゃんと運用するとなると話は別です。

「多少利益があったから、あまり見ていないけど続けていた事業っていっぱいあると思うんですよね。でも、それのリスクの方が高まってきた」

運用しきれないものを抱えること自体がリスクになる。だからこそ、この事業を続けるかどうかの判断も、SRE が気にすべき領域になってきたそうです。吉川が挙げた、脆弱性をきっかけにサービス終了を決めた企業の例にも、柘植さんはその意思決定ができるだけでちゃんとしていると話していました。

インシデントコマンダーが AI、作業するのが人間?

柘植さんのチームでは、マネジメント領域の AI 活用も検証しているそうです。

「むしろインシデントコマンダーがAIで、作業する人が人間でいいんじゃないか、とか」

本当に怖い世界かもしれない、とご本人も笑っていましたが、AI と人間それぞれの得意なことを見極めながら、いろいろな形を試しているとのことでした。


6. おわりに:組織づくりは信頼から始まる

組織構造というと、チームの形や配置図の話をイメージしていました。でも今回のお話を聞いて、その土台にあるのは人と人との信頼なんだと感じます。

目の前の困りごとから入る。まずは困ったらこの人と思われる存在になる。一緒に働く人の期待値を超える。どれも、信頼を作るという話につながっています。

書籍の第 8 章には、今回ご紹介しきれなかった組織パターンや実装モデルの選び方が詳しく書かれています。SRE チームの立ち上げや見直しを考えている方は、ぜひ手に取ってみてください。

アナウンス

SREの知識地図 第 8 章のアーカイブ動画は以下よりご確認ください〜

🎥 アーカイブ動画はこちら

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